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STRAWBERRY MOON

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音 4

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「バイトくん。馴染んでるねぇ。」



バンド練習に来たおっさんたちと話の花咲かせるチャンミンを見てそんなことを言う。




確かにここ3カ月くらいの間にああいうお喋り好きなおっさん達の相手は上手くなった。


俺が触って良いと言ってあるギター片手に手ほどきされながら、コードの押さえ方が書いてある教本と睨めっこしている姿が可愛らしい。




お客さん達とそんな風に交流すんのも仕事だって言ったら、真面目な顔して頷いてああして頑張っているから、尚更…、



根が素直なのか
癖のない弾き方を覚え


何かと手を出したいおっさん達の餌食





「ユノが教えるんじゃなかったの?」


「俺なんかよりアイツらのが上手いだろ。」



「…へぇ。意外。」



俺の心中お見通しってな感じで笑うボアとは付き合いが長い。


幼稚園入る前から知ってる同士
取っ組み合いの喧嘩だってした。



元々ここの生徒出身でバイトが延長した感じでなし崩し的先生

楽器店の中に併設されてる教室スペースでリトミックやピアノを教えてる。



厳しい割にって言っちゃなんだけど、
人気がある先生だったりする。








「見てるだけで幸せ。なんて
年寄り臭くなったわね。あんた。」


「…、別にそんなんじゃねぇし。」



俺の黒歴史もなにもかも…
情け無いもんも見られてきてるし

他の先生たちとの間に入って調整してくれたりすんのもコイツだから、なんとなく




「もう、ああいう沼みたいなもん…疲れたな。」


「うわっ、やっぱ、ジジ臭いっ。」




まだ私らハタチだよ?なんて…
花盛りが枯れてどうする。だなんて言って笑う


コイツに気持ちを吐露するのも抵抗はなく、
恋愛についてもつい本音が出る。


でも俺は本当に、あんな重苦しいだけのもんは…こりごりだ。







「ちょっと、私に甘えないでよ?
ユノヤが彼氏だって勘違いされていい男逃したらどうすんのよ。」



「この店にそんな奴こねぇから、心配すんなって。」


「いるじゃん。バイトくんとか、たまに寄ってくれるバイトくんのお友達とか。」



俺の気持ちを逆なでるようなことも平気で言うのはコイツくらいで…



「…まぁ、バイトくんは私よりユノの方がお気に入りっぽいけどね。」



なんて、心乱すこともしゃぁしゃぁと言う。



「お気に入りなわけねぇだろ。
毎日、小言ばっか言われてるぞ?俺。」


「確かにいつも怒られてるわよね。」


なんて大笑いしやがって…





こうして話せる奴がいるっていうのは宝だけど、痛いところ突かれるっていうのがちょっと…





「で?パパさんとは仲直り出来たの?」


「口きいてくんねぇよ。未だに、」



「そ。」



親父にとっては許せるはずねぇ事してたんだから、しょうがない…



「ユノが悪いわけじゃないのにね。」


「俺が悪いんだって、」



恋愛にすらなってなかった。多分…
弱ってた俺が縋ったってだけだ。

俺みたいな奴は理解されなくて当然で





「後継ぐために調律の勉強に行ったりしてユノだって頑張ったんだから…」

「そんなの関係ねぇよ。」




そんなことは関係ない。

親父が大切にしてきたもんを汚したようなもんだ。
俺の弱さで、


綺麗な優しい音溢れるこの店を汚い音で汚した。




「…もうそろそろ、さ。…前向きなよ?」


「向いてるよ。」



向いてるから、ここに戻って来た。





無垢なこどもたちの声
努力の結晶のようなピアノを奏でる音

ギターやハーモニカ、フルートやサックスの音




小さい時から囲まれてきた大切な音…
それを守りたいって

今度こそ汚さずに守りたいって
そう決心したから、この場所に帰ってきた。




…「おまえとは働く気は無い。継ぐんならひとりでやれ。潰したら二度と家の敷居はまたがせない。」

それだけ言って、
親父にとって俺は、存在しない息子だ。


家にいても息苦しいだけ、


母親のすすり泣く声や親父の苛立った声



そんな音しか聞こえなくなった家から逃げるようにココで…




溜息出す俺の頭を小突いてくる。

口は「ばぁか。」と動き、視線はチャンミンに向けられる。





「バイトくんが入ってから教室も埃ひとつなくて気持ちいいんだよねぇ。」



ボアは良く見てる。

チャンミンが毎日のようにピアノを拭き
教室の床も掃除機かけて窓ガラスまで丹念に拭いてること



「教材もさ。必要だなって思う時には揃ってるし、月謝袋の遅れもないし。」



先生ごとに分けられたスペース

チャンミンがレジ裏の棚を整頓してそんなもんをいつの間にか作っていた。


先生の名前が書かれたプレート付きの籠には楽譜や教材なんかが入ってる。



「誠実そうだよね。あの子。」


「…だな。」



流されて誰かと寝るなんてこと
しなさそうだよな。



「ユノの信者みたいだしね。」


「信者って、」







たった1度だけ気まぐれで助けたあの事だけを見て、俺のこと誤解してんじゃねぇのかな


俺はそんなたいそうなもんじゃない。





弱くて流されやすい…ダメな人間






「ほら、もう
分かりやすいったらないよね。
目からビーム出てる。

あ…なんだっけ、あのアニメに出てくる…、城をずっと守ってたロボットみたい。」



ケタケタっという笑い声

チャンミンの方から感じる強い視線



「ビームで焦げちゃいそうだから明日のレッスンの準備しちゃお。
あぁ、怖い。怖い。」




ボアが冗談でも軽くでもあの事には一切触れてこなかったのに、最近やたらとその話題に触れるのは…





「いい護衛がついたみたいだから、
…、もうユノも大丈夫ね?」



って、


チャンミンはそんなんじゃ無いって…



もし、仮に、
そんな気持ちを一欠片でも出してきたら

…バイトを辞めて貰うしかなくなる



もう嫌なんだ、あんなことは




俺はただ、綺麗な音だけを、
綺麗な姿と音だけを愛でていたいだけ


心安らぐ音を奏でるチャンミンを…









降り始めた雨音が大きくなる


吹き込んでくる風と…





「…元気だったか?…そっか、おやっさんが引退したってのは本当なんだ?」




濡れた足音

消し去りたい過去の音



「…どう、も。」



自分の中から乾いた音がする


2度ともう…会わないと、




「で?故障した電子ピアノって?」



「あ、ぁあ、基盤の方がいかれてるみたいで、」




「そ。…
なんだよ。俺が来るのが意外って顔だな。

まぁ、おやっさんからは出禁くらってたけど、おまえなら別にいいだろ?」



…噂はするもんじゃねぇな。



少し濡れた髪をかきあげる指には鈍く光る指輪




…そか、結局…、結婚できたんだな






リバイバル曲が流れ始める


2度と聞きたくなかった…曲が、流れる






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今日も読んでくれてありがとう!
前作みたいなことはないよ。ふふ←言っちゃダメ!
あ、ドキドキして明日を待っててね♡←オイ!
あ、詳細は明後日かな?←コラ!!
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2 Comments

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2018/04/12 (Thu) 15:11 | REPLY |   

僕猫  

み◯の◯ょ◯さんへ

あ、み◯の◯ょ◯さん( ^ω^ )ぷくくっ

そっか。そっかぁ。前作は辛かったもんね。偉い偉い♡←何様僕猫
毎日楽しんでくれてありがとう♡
そしてほんわかにスパイスがきますが…

そうよ。明後日♡←え!放置ぷれい?
ん?ユノの過去が気になる?
まぁ、前作を乗り越えたみ◯の◯ょ◯さんなら、朝飯前なチョピっとしたことよ♡←嘘つくな!

ん?うふふ。
脳内映像は、コントロール不可です/(^o^)\←叩かれるのを防御?

予想してみてね♪
2人の絡みあいも…さぁ、どっち?w

2018/04/12 (Thu) 20:53 | EDIT | REPLY |   

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